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整形外科とは、四肢、脊椎を運動器として扱う分野で、骨、筋肉、神経、血管、皮膚などの解剖学的な修復から再建までを行います。世間では、整形外科を美容整形と混同したり、骨しか扱わないかのような誤解をされたりすることがありますが、人間が生活する中での移動や道具の使用などによる外界との関係においての“動き”という観点から外科的治療を行う分野です。すなわち、損傷を負った部位を外科的手法において、元の状態に近づけ、機能回復を目指す、それが整形外科なのです。その手技は多岐にわたり、人工関節置換術のように骨を大きく切ったり削ったりするようなことから、顕微鏡を使って1mm以下の血管を縫ったりする微細な手技も必要とされます。

当院の整形外科は、常勤医2名、非常勤医2名で行っています。外来は、月曜日から金曜日まで基本的には2診制で行っており、第2・4土曜日にも1診制で診療を行っています。手術は、手術室のスケジュールよっては、毎日でも行うことができる体制をとっております。しかし、残念ながら整形外科の常勤医師の数としては、現在の外来患者数からすると不足していることは否めず、救急対応という面においては、全てを受け入れることができる状態とはいえませんが、慢性疾患を中心として確実性のある治療を行おうと、心がけています。病院の体制としては、200床足らずの中規模病院の小回りの良さを生かした他科との連携や、高度な麻酔技術により、他院では危険性が高くてできないような重症心疾患や内科的疾患を持った患者の手術にも対応させていただいております。また、近くの開業医、他の病院との地域連携も大切にしており、ソーシャルワーカーによる転院先の手配や介護サ−ビスの利用についてのアドバイスなども積極的に行っています。

当科の方針として、『病気とは、医者が治すのではなく、医者ができることはガーゼを当てること(治癒の手助け)でしかない』という箴言に従い、病気の自然経過を考慮したうえで、もっとも適切と考えられる治療を提案したいと考えており、手術侵襲をできるだけ小さくすることで、手術による正常組織の破壊をできるだけ抑えた治療をおこなって参ります。整形外科一般はもとより、上肢、脊椎、関節、リウマチ外科に重点を置いており、関節の機能再建として、人工関節置換術のみならず骨軟骨移植なども場合によっては考慮し、できるだけ自然に近い治療も行います。また、緊急を要する切断指などの上肢の施術には、時間の許す限り対応していくようにし、残された機能の回復に全力を尽くしたいと考えております。当然のことながら、運動器の再建後には運動療法も重要で、理学療法士との間で緊密な連携を取り、早期機能回復を目指します。

《手の外科の紹介》

手の外科とは
解剖学的な手は、手関節より先にある構造で27個の骨、手の中に起始する19個の筋肉、前腕より起始する24個の筋肉、3本の神経、関節、靭帯、爪などが、3本の動脈により栄養されています。手の運動を脳との関係で見ると、大脳における一次運動野で手をコントロールする領域は、体の他の部分に対する支配領域と比べて特別広い領域を占有しており、手が器用に使えるようになったことが、人間という種を作り出す要因になったと言えるかもしれません。また、手指には繊細な知覚が存在し、複雑な情報のやり取りを脳との間に行っています。このように手が機能的であるためには、前腕、肘、上腕、肩の複雑なバランスの上に、脳との間に運動、知覚情報の交換が必要で、手の外科とは、このような上肢全体の疾患に対して、外科的に取り組もうとする分野です。あまり聞きなれない分野かもしれませんが、1965年に世界で初めて日本の医師が完全切断母指の再接着に成功し、1973年には、血管柄付きひ骨移植が、世界に先駆け日本で初めて行われるなど、日本の手の外科の技術は、海外での高い評価を受けています。この歴史ある手の外科を専門とする医師たちの集まる日本手の外科学会も毎年行われ、今年で第51回を迎えました。

手の外科で扱う治療手段
手の組織が損傷された場合、整形外科の他の部位と同様に、基本的には、解剖学的修復を目指し、これが成功すれば、最も機能的な手の回復が得られます。金属製のワイヤーやスクリュー、プレート、創外固定器を使った骨接合術、腱、神経縫合、血管吻合などを行いますが、特に正確な手技が必要で、わずかな骨の変形で、手を握ったときに指が重なってしまうなど障害を残すことがあります。手の外科独特の手技として、atraumatic
surgeryがあり、これはできるだけ正常組織を傷めないようにする手術操作のことで、皮膚を愛護的に扱う場合に、フック鑷子(セッシ)という特別なピンセットでつまんだり、組織を切るときに、はさみではなく、メスを使ったりするのですが、手の機能にとって、瘢痕形成ということが、他の部位に比べ大きな問題となるため、特に注意深い操作が必要とされます。組織修復のためには、長期安静固定が望ましいわけですが、上肢の場合、腱の癒着、関節の拘縮になりやすく、このようにならないように、損傷部位に応じた固定肢位、早期運動療法を行う必要があります。損傷の程度が大きく修復ができない場合、他の組織などによる再建を考慮することになり、例えば神経麻痺の場合、神経の修復で機能の回復ができなければ、健常な神経や腱、筋肉の移行を行なうこともあります。たとえ脊髄損傷や脳梗塞で麻痺した手であっても、症状に応じてより使いやすい手にすることも可能です。さらに関節リウマチにより変形した手でも人工関節を含め、さまざまな再建方法があり、機能の改善を図ることもできます。また、手の外科と、顕微鏡を使った手術(マイクロサージャリー)とは切り離せない関係にあり、血管を含めた組織を他の部位より採取し、失った指の再建なども可能となっています。この技術の応用により、手以外の他の部位の骨や皮膚の欠損に対して生きた組織の移植を行なったり、骨髄炎など感染制御に用いたりします。

これからの手の外科と当院の方針
現在においても新たな解剖が上肢において明らかになったり、新たな手術手技が考案されたりしており、まだまだ工夫の余地のある分野です。神経縫合を行う場合、切れた神経を健常な神経の側面に縫合しても、神経の回復が起こることが明らかとなってきました。こうすることで、健常な神経を犠牲にすることなく、機能再建ができる可能性が出てきています。マイクロサージャリーの技術も進歩し、1mm以下の血管を吻合し、指尖部の切断の再接着を行なったり、大きな皮膚を血管柄付きで移植したり、リンパ管を静脈と吻合することで、リンパ浮腫の治療を行なうことも可能となってきました。当院としては、経験ある医師のマイクロサージャリーの技術を生かし、手の外科の救急にもできるだけ対応していきたいと考えております。そして、月日により修飾され、関節や腱、神経、皮膚などいろいろな要素が絡み合った症状の原因を正しく診断することの難しい手の外科の分野において、これを確実に行い、atraumatic surgeryを心がけたいと思っております。
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