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知らないあいだに進行する骨粗しょう症。その原因や症状・治療・予防について、ひまわり編集部が整形外科部長 秋山医師に聞きました。
その名のとおり骨がもろくなり骨折しやすくなる病気で、日本人の約10人に1人がかかっているといわれています。原因の一つは加齢で、特に女性は閉経後に骨密度が低下するため50歳以上の多くの人に見られます。怖いのは、本人が自覚できる症状がほとんどないことです。医師が診ると体の動きや腰の曲がり具合などで発見できることもありますが、多くは骨折してから来院されて、検査で初めて発見されることが多い疾患です。また、糖尿病・慢性腎不全・慢性呼吸器疾患などがある方も、骨の代謝が悪くなるため発症しやすくなります。
折れやすい箇所は大腿骨の根元・手首・腕の付け根などですが、特にいちばん起こりやすいのは脊椎圧迫骨折(背骨の骨折)です。脊椎圧迫骨折は痛みを伴わないことがあります。そのため知らない間に潰れていき、気がつかない方が7割くらいだと言われていますが、放っておくとだんだん背骨が曲がってきたりします。脊椎圧迫骨折が起こっている目安には、20代のころより4cm以上身長が縮んでいたり、骨盤と肋骨の幅が狭くなったりという事例も挙げられます。
保存治療、または手術治療をおこないます。大半は保存治療で、折れた箇所をコルセットで支え、お薬の継続服用や点滴治療によって悪化を防ぎます。中には骨折が治らない、痛みや運動障害がおこる、折れ方によっては麻痺が出てしまう方などもありますので、そうした場合は手術治療をおこないます。
折れ方にも安定型と不安定型の2通りがあります。安定型の場合は、圧迫骨折によりつぶれた骨だけをセメントで固めて痛みを止める椎体形成術をおこないます。不安定型の場合はつぶれた骨をセメントで固めるほかに、人工骨や金属のスクリューで周辺の骨から固定する方法などもあります。
半年間は堅いコルセットをしていただきます。大切なのは骨折治療が終わっても、骨粗しょう症の治療薬の服用を継続することです。一度骨折すると次の骨折リスクは高いままになるため、骨密度が高くなっても治療を続ける必要があります。リハビリもおこない、寝たきりにならないようにします。また最近では、OLS(骨粗しょう症リエゾンサービス)やFLS(骨折リエゾンサービス)のような取り組みが広まってきています。
OLSとは、「骨粗しょう症の予防と改善、治療の継続管理」、FLSとは「二次骨折予防のための治療継続管理」をいろいろな職種で管理していく取り組みです。OLS、FLSをスムーズにおこなうためには、病院が体制をつくり、開業医・薬局・学校などと連携して薬の継続・検査の啓発をしていくことが重要です。さまざまな職種か関与し、地域全体で治療の継続を促すことにより、骨折の再発を防いでいきます。すでにこのような取り組みがおこなわれている地域もあります。当院でも今後、積極的に広めていきたいと考えています。
骨質が低下しないように食事や運動が大切です。食事はカルシウム・ビタミンD・ビタミンKを摂取し、適度な運動で骨に負荷をかけます。ビタミンDの活性化のために適度に日光に浴びることも必要です。嗜好品(お酒・たばこ)も過剰摂取すると骨粗しょう症の原因となります。
骨粗しょう症には自覚症状がありませんので健診も大切です。骨密度の検査を受けて早期に発見し、治療されることが必要です。まずは信頼できる開業医さんにご相談ください。